第16回「フェロモン研究の最近の進歩と発展」(2015.11.05)

第16回 アロマ・サイエンス・フォーラム 2015
メインテーマ:アロマ・ルネッサンス
フェロモン研究の最近の進歩と発展
─親子の匂いコミュニケーションを中心に─

Symposium on “Olfactory communication between mother and child”

まだ目の開かないウサギの赤ちゃんが、ミルクの匂いにひかれてパックリと口を開く。今回、特別講演にお招きする、ベノア・シャール博士の有名な研究の一コマです。
 哺乳類の生存戦略としての子育ては、ミルクについて、またなぜあのようにこどもたちを慈しむことができるのか、多くの研究が進められています。今年は日本各地で、現時点で世界最古の胎盤をもつとされる真獣類ジュラマイアの化石が巡回展示されるなど、注目が集まっています。
 本フォーラムでは、哺乳類の親子コミュニケーションについて、匂い・香り・フェロモンの最新研究から探っていきます。シャール博士による母子間のコミュニケーションの研究とともに、オスの匂い物質曝露がメスの乳腺発達のみならず次世代にも影響を与えること、ミルクの成分と子育て戦略の進化について、母子間を含めたヒトの匂いコミュニケーション、また親子での伸びやかなお風呂の時間を演出する香りについてもご紹介いただきます。母の匂いの学習をし、匂いの絆を強く結ぶ新生仔による嗅覚学習の神経機構、ヒトを含めたすべての哺乳類が持つ主嗅覚系の匂い受容器には、母親による子育てなど社会性行動における役割があることまで、親子間の匂いコミュニケーションについて、一日じっくり学ぶことができます。ぜひご参加ください。


世話人:AROMA RESEARCH 編集委員会
東京大学名誉教授・香りの図書館館長(委員長) 谷田貝光克
藍野大学医療保健学部臨床工学科教授 外池光雄
科学技術振興機構(東京本部)産業医 本間請子
元(株)資生堂研究所チーフパフューマー 廣瀬清一
酒井電子顕微鏡応用研究所上級研究員・岩手医科大学生理学講座研究員 高見 茂
山口大学名誉教授 青島 均
星薬科大学ペプチド創薬研究室・トリノ大学医学部客員教授 神保太樹
編集アドバイザー:澁谷達明、中島基貴、斉藤幸子、吉武利文、堀内哲嗣郎
主催:フレグランスジャーナル社 代表取締役会長 津野田勲

Program

9:30~開会挨拶

9:40~10:20

1)フェロモン曝露が次世代におよぼす影響
インディアナ大学医学部 小山幸子

マウスを用いた研究では、オスの匂いがメスの発情周期や妊娠成立、脳の神経発生に影響することがわかってきている。異性の匂いが性ホルモン分泌を変化させてこれらの現象を引き起こすならば、他の組織や器官にも影響が考えられる。本発表では、オスの匂い物質曝露が乳腺の発達に影響し、次世代へも影響が及ぶことを示す。

10:20~11:00

2)ミルクオリゴ糖の進化と哺乳類の生存戦略
帯広畜産大学大学院畜産学研究科 浦島 匡
哺乳動物の母乳は数%の糖質を含むが、多くの場合は主要な糖質としてのラクトースとともに、ミルクオリゴ糖と言われる多種類のオリゴ糖も含んでいる。ヒトではラクトースは乳児への栄養源、ミルクオリゴ糖は感染防御機能を担う。単孔類、有袋類では乳の中でラクトースは少量でミルクオリゴ糖の方が多く、後者には種に固有の役割がある。本講演では、様々な動物種のミルクオリゴ糖の状況を紹介し、哺乳類の子育て戦略の進化と関連づけて紹介する。

休憩(10分)

11:00~11:50

3)匂いを介したヒトとヒトのコミュニケーション:
乳児〜高齢者まで
長崎大学大学院医歯薬学総合研究科神経機能学 篠原一之

ヒトにおいても、個体の生存、子孫繁栄に必要な情報を交換するために、フェロモンを用いたコミュニケーションが頻繁に行われている。例えば、乳児期の母子間コミュニケーション、成人女性の月経同期・パートナー選択、パートナーの男性ホルモン増加はフェロモンによってもたらされる。これら匂いを介したヒトコミュニケーションについて概説したい。

昼食(60分)

12:50~14:10
【特別講演
匂いを介した母子間コミュニケーション:マウス、ウサギ、そしてヒトにおける共通性

Maternal odor communication with newborns: commonalities in mice, rabbits and humans.
フランス国立科学研究センター ベノア・シャール
(Center for Smell, Taste and Food Science, CNRS-University of Burgundy, Dijon, France:Benoist Schaal)

母子間の相互作用は、新生児の生存と成長のためには欠かせません。誕生直後のこれらの相互作用をとおして、母は仔に水分と栄養、そして免疫システムを初乳/母乳を介して伝えますが、それには、新生児は乳首に到達する必要があります。この重要な相互作用でほ乳類新生児が経験する知覚過程を分析することで、母親がどのような匂い信号を発し、新生児がどのようにそれを検出して統合しているかを知ることができます。この発表では、授乳中のメスの乳腺周辺にある匂い分泌腺および匂い刺激についての研究をまとめます。匂い刺激には母乳など体内から分泌されたもののほかに 母性行動/新生児行動によって乳首に付いた付着物があり、これらについて齧歯類やウサギ、そして霊長類での研究をまとめます。また、乳腺から採取した匂い化学刺激が新生児を用いた実験に使えるかどうか、同定された匂い化学信号が乳腺由来かどうか、そしてこれらの信号が本能的に行動を引き起こすことができてフェロモンと呼ぶことができるかどうか(つまり、通常の学習された匂い刺激とは異なるか)について考察します。本能的な乳腺匂い刺激は、新生児に他の匂い刺激を速やかに学習させ、これらの学習された匂い刺激は発達初期の社会的相互作用と授乳での相互作用において適応的意味を持つ付加的な刺激になります。これらの例を通して、匂い刺激を発すること、あるいは乳腺からの信号が、新生児からの適応的な反応(速やかな覚醒、動機づけ、誘引、欲求行動と学習)を導きだすのに、 ほ乳類全般で広く適応的な母親の戦略だということを示します。

14:10~14:50  4)香りによるバスタイムの親子コミュニケーション促進
花王株式会社香料開発研究所第一研究室 藤本礼子

花王では、香りが「感情や気分」に与える効果に注目し、香りの心理生理効果に基づく評価・開発技術を用い、精度良く情緒的感情の計測が可能となった。今回は、この成果を応用して親子の入浴における独特な感情構造を抽出し、香りによる商品価値向上を検討した経緯について発表する。

休憩(20分)

15:10~15:50  5)生存戦略としての母の匂いの学習
高知大学教育研究部医療学系看護学部門地域看護学講座 奥谷文乃

新生児はスキンシップをもって自分の世話をしてくれる母の母乳の匂いを生後数日以内に記憶する能力を持つと報告されている。このように母の匂いを学習することは幼若動物にとって母と子の絆を築く強力な生存戦力になっている。これまでに明らかにしてきた新生仔による嗅覚学習の神経機構を紹介したい。

15:50~16:30  6)社会性行動における匂い受容器の役割~マウスの研究からわかってきたこと
関西医科大学附属生命医学研究所神経機能部門 松尾朋彦

匂い・フェロモンは個体間のコミュニケーションを媒介する。匂い受容器の機能を阻害したマウスでは、母親 による子育て行動をはじめ、生殖・攻撃行動などの様々な社会性行動を正常に行えなくなる。本講演では匂い受容器の1つであり、ヒトを含め全ての哺乳類が持つ主嗅覚系に着目し、その社会性行動における役割を紹介する。

※当日、都合によりプログラムの一部が変更される可能性もありますが予めご了承下さい。

 

過去のアロマ・サイエンス・フォーラムセミナー内容

アロマ・サイエンス・フォーラム

 

セミナー・イベントトップへ