第1回 「化粧品の乳化処方の課題解決と製造上のトラブル防止」

第1部 乳化化粧品製造のトラブル防止と
      低エネルギー乳化法(LEE)の応用

【13:30~15:00】 Dr. T. Joseph Lin(コンサルタント)

 

 ますますグローバル化し、競争が激しくなる21世紀の化粧品市場では新製品の開発、製造効率、コストダウンについても新しい考え方が必要です。化粧品はファッション製品であり、消費者ニーズの変化、環境問題や政府の規制の変化に応じてマーケティングの焦点、製品内容が変わり、原料の選択、製造法から安全性テスト法までもいろいろ影響されます。最近米国の化粧品メーカーで処方を造る技術者の心配事が増えています。昔から使い慣れた防腐剤、乳化剤など多くの合成原料が、安全性問題でなく、「INCI名の印象が悪い」理由で使えなくなり、効果不明の慣れない代替原料を使用して製造と安定性に問題が起こる事を恐れています。その問題を解決しようと原料もエネルギーも多く使用して製造することがよくあります。しかし乳化製品では界面活性剤もエネルギーの使用も「バランス」が重要です。More Is Betterの考えで原料やエネルギーを使い過ぎる事で、逆にコストアップになることがよくあります。LEE(低エネルギー乳化法)の基本的理念はLess Is Moreで、必要な時に必要量のエネルギーを必要な所に供給する考えです。実際にCO2 排出量を削減し、省エネ効果を発揮し、コストダウンと同時に生産効率と品質の向上を狙う戦略です。更にこの理念は省エネの他にも、製造と処方問題のトラブル防止と解決など、いろいろな利用法があります。

〈講演の主なコンテンツ〉
1.何故乳化化粧品製造トラブル、製品リコール問題が増えている?
2.熱力学と乳化製品の製造問題、成分変動(cV)とプロセス変動(pV)について 
3.パイロットバッチとスケールアップ問題
4.低エネルギー乳化の原理と利用法
5.Less Is Moreの応用で、大型バッチ生産問題を解決し、エマルションの安定性を改善した実例

Dr. T. Joseph Lin(ジョセフ・リン)
カリフォルニア大学バークレイ校で化学工学を専攻。米国Max Factor 社ハリウッドR&D エマルション研究部のリーダー。その後技術コンサルタントとして乳化化粧品開発、製造問題の実際解決の指導に従事した。低エネルギー乳化法(LEE)を開発し、国際学会でも多数のエマルション研究論文を発表。2001年米国Society of Cosmetic Chemists 最高栄誉、M. G. deNavarre Medal Awardを受賞。フレグランスジャーナルのコラムニストとしても35年活躍。

 

 

第2部 界面活性剤の有効活用からみた乳化法の課題解決
【15:20~16:20】 鷺谷廣道(ポーラ化成工業(株)技術最高顧問)

 

 化粧品におけるエマルション処方には他の剤型に比べると課題が発生する場合が多く、化粧品処方研究者を常に悩ませています。多くの研究者がこの課題解決のために努力してきましたが、なかなか問題解決には至ってはいません。それは化粧品が常に新規性を求められる商材であるために、次々と新たな剤型とそれに伴う課題が持ち上がるからとも言えます。それ故エマルションはそれだけ懐の深い剤型であるといえます。このようになかなか解決できない課題が山済みであるがために、逆に私はエマルション研究の魅力を感じてきました。本セミナーではエマルションのかかる課題解決のアプローチの考え方を皆さんと議論できればと思っています。

〈講演の主なコンテンツ〉 
1.優れたユニークな機能・感触・剤型を持った新しい乳化法開発のために、界面科学的視点から乳化メカニズムの本質と問題点について理論的にわかり易く解説し、処方開発のための情報と問題解決のためのアイデアを提案 
2.そのために、相図を用いて界面活性剤の溶解特性などに関する基礎知識について解説 
3.乳化プロセスにおける転相温度乳化法、D相乳化法をはじめ界面科学的手法を用いた乳化法の意味について解説 
4.乳化におけるHLB数の意義についても検証する

鷺谷廣道(さぎたに ひろみち)
横浜国立大学工学研究科修了後、ポーラ化成工業株式会社勤務。36年の勤務中、約半分は化粧品開発に従事、その後医薬品新規事業の立ち上げ、両部門の経営業務に従事。同社代表取締役社長を経て、現在技術最高顧問。D相乳化法の開発などエマルション研究は化粧品開発に従事していた主要主題