第43回「ヒトの化学シグナル研究の過去・現在・未来─フェロモン研究を中心に─」

第43回「ヒトの化学シグナル研究の過去・現在・未来─フェロモン研究を中心に─」(2013.5.29)
講師:高見 茂 先生 酒井電子顕微鏡応用研究所・岩手医科大学生理学講座・杏林大学元教授

 「匂い」や「香り」をもたらす分子は、まず、鼻の奥にある嗅粘膜の中に存在する嗅細胞に「受容」され、「化学シグナル」として脳に伝わります。これらの化学シグナルは、大脳皮質にまで到達するのでの私たちは「知覚する」ことができます。しかしながらフェロモンによる化学シグナルは、大脳皮質ではなく視床下部に達し、内分泌系や自律神経系に影響を与え、特定の行動を引き起こすものもあります。匂いや香りの本体は揮発性の分子であり、空気の流れに乗って鼻のあな(外鼻孔)から吸い込まれて嗅細胞に到達します。一方、多くの脊椎動物ではフェロモンは不揮発性のものが多く、その受容器である鋤鼻器(じょびき)の中に吸い込まなければ、化学シグナルとして働くことはできません。 
 それまで実験動物でフェロモン受容器である鋤鼻器とその中枢の解剖学的研究をしていた私が、縁あって、成人の鋤鼻器がフェロモンを受容していると確信している研究グループと共同研究する事となり、鋤鼻器をより深く知ることとなりました。それと同時に、「研究の公平性・独立性」が人間の意思により損なわれる危険性も痛感しました。ヒトのフェロモン研究を中心に、ヒトの化学シグナル研究の歴史をたどりながら、その未来についてもお話したいと思っています。 
(専門領域:化学感覚系の機能形態学)