第17回「香りで社会の変革はどこまで可能か」(2016.10.13)

第17回 アロマ・サイエンス・フォーラム 2016
メインテーマ:
香りで社会の変革はどこまで可能か
How much social changes with aroma can be up to ? 

香り・においで
がん患者の早期発見・治療を可能に!!


 近年寿命の伸びと出生率の低下により少子高齢化が急速に進んでいます。 わが国の将来推計人口によれば総人口は2005年をピークに減少を続け2015年には4人に1人が65歳以上となり、かつてない少子高齢化時代へ突入しています。社会への影響として年金、医療、介護などの社会保障費の負担が増大します。高齢化の進展により死亡 者数も増大しています。  病気原因の死亡率は、1位「がん」、2位「心臓病」、3位「脳卒中」で2,3位共に血管の障害によるもので、危険因子は高血圧です。両者で全体の1/3を占めます。1980年ごろまでは脳血管疾患が1位でしたが、それ以来は「がん」が1位となっています。  国立がん研究センターは、2016年がんと診断された人は初めて100 万人を超え過去最高となったとの予想を発表しました。部位別では大腸、胃、肺、前立腺、乳房の順です。部位別死者数では肺、大腸、胃、膵臓、肝臓の順です。今後、胃がんが減り大腸と肺がんが増える見通しです。今後の傾向としては、認知症患者の増大が見込まれています。厚労省は認知症患者数は、2025年には700万人を突破し、65歳以上の5人に1人の割合で発症が懸念されています。この10年で1.5倍に増加しました。厚労省は、この結果を踏まえて認知症対策の国家戦略を策定することにしています。  そこで香りによって嗅覚を刺激して認知症やパーキンソン氏病など脳にかかわる病気リスクを軽減しようとする治療法が注目されています。嗅覚は毎日再生を繰り返しています。新生した嗅細胞は匂いの刺激を受けることによって成熟し、機能を活性化することが臨床研究によって明らかになってきました。  最近では嗅覚の低下によってパーキンソン氏病やアルツハイマー病などの神経変性疾患を引き起こすとされています。嗅覚低下者の早期手当てによって脳障害病の早期発見、早期治療につながると期待されています。  かつては、病気特有のにおいから病名をあてる診断法<嗅診>がもてはやされました。しかし医学的な信憑性に乏しいということで実用化されませんでした。患者の発する呼気や分泌物には様々な生体情報が豊富に含まれています。最近では、がん患者の特定分子を解析してがんの診断に役立てようとする研究が盛んにおこなわれています。香りやにおいを用いて病気の早期診断や治療などに用いることによって社会保障費の負担軽減につながるものと期待されています。香りで社会の変革をどこまで可能にするかの一端を本日のシンポジュームから実感していただければ幸いです。


世話人:AROMA RESEARCH 編集委員会
編集アドバイザー:澁谷達明、中島基貴、斉藤幸子、吉武利文、堀内哲嗣郎東京大学名誉教授・香りの図書館館長(委員長) 谷田貝光克
藍野大学医療保健学部臨床工学科教授 外池光雄
日本橋ヴィダサナ健康クリニック院長 本間請子
元(株)資生堂研究所チーフパフューマー 廣瀬清一
酒井電子顕微鏡応用研究所上級研究員・城西国際大学兼任講師(理学療法学科)・岩手医科大学歯学部病態生理学研究員 高見 茂
山口大学名誉教授 青島 均
鳥居医療総研統合医療研究所主幹研究員 神保太樹
主催:フレグランスジャーナル社 代表取締役会長 津野田勲

9:30~開会挨拶

9:40~10:20

1)呼気ガス診断の過去・現在と未来への展開 
中部大学 生命健康科学部 下内章人

呼気成分には種々の生体内代謝情報が含まれている。呼気O2やCO2以外の大部分はppm~ppb以下の低濃度で存在する。呼気診断は嗅診として紀元前400年頃に始まり、20世紀半ばでようやく分析対象となり、現在では呼気揮発性有機化合物は1840種類が登録されている。しかし、大部分の高分子化合物の病態生理学的意義は不明である。最近では新規センサーの開発が進み、呼気検査は発展途上の揺籃期にある。

10:20~11:00

2)膨大な匂い分子を嗅ぎ分けて定量するセンサーの開発にむけて
大阪大学 産業科学研究所 黒田俊一
マウスの嗅覚受容体は約1,000種類、ヒトは約400種類しか存在しない。しかし、何万種類もの匂い分子を嗅ぎ分けることができるのは、何種類かの同受容体が1つの匂い分子に対し同時に異なる程度で活性化するためと考えられている。私たちは、そのような高度な機能をもった匂いセンサーの開発を行っているので紹介したい。

休憩(20分)

11:20~12:00

3)GC/MS による呼気分析の進歩
東北医科薬科大学 薬学部 臨床分析化学教室 藤村 務

初期の食道がんは自覚症状がほとんどなく、リンパ節転移が多く比較的周囲に浸潤しやすいことから発見が遅れやすい。臨床医はがん患者の呼気に特有のにおいを感じ、疾患によって発生する臭気の存在を疑っている。今回、食道がん患者の呼気をGC/MSを用いて測定し、食道がん特有の臭気の原因となる物質を探索した。

昼食(70分)

13:10~13:50

4)揮発性有機化合物を検知するガスセンサの開発とその応用~病気の早期発見に向けて~
産業技術総合研究所 無機機能材料研究部門 伊藤敏雄

揮発性有機化合物(VOC)の一部は有害で、シックハウス症候群の原因の一つとされている。また、呼気にも様々なVOCが含まれ、一部は疾患との相関が指摘されている。これらの濃度はppbレベルの極低濃度で、センサで検知するには容易ではない。本発表では低濃度VOCを検知するセンサの開発と、応用例の一つとして肺癌スクリーニングに向けて開発した機器について紹介する。

13:50~14:30

5)モバイル嗅覚に向けたナノメカニカルセンサ「MSS」の総合的研究開発
(国研)物質・材料研究機構MANAナノライフ分野ナノメカニカルセンサグループ 吉川元起
様々な分野における各種の「ニオイ」を識別する嗅覚センサ、特にモバイル用途やIoTに対応可能な小型の汎用嗅覚センサシステムの実現に向けて、総合的な研究開発を行っている。基礎技術となるセンサ素子「MSS」の動作原理から、産学官連携による周辺技術統合の取り組みである「MSSアライアンス」まで、全体像を概観する。

休憩(30分)

15:00〜15:40

6)生物の嗅覚を利用したがん診断の未来
九州大学大学院 理学研究院 生物科学部門 広津崇亮

がんによる死亡を防ぐ最も有効な手段は早期発見である。しかし我が国のがん検診受診率は低く、有効な検査のないがん種もある。そこで我々は「生物診断」という新しいコンセプトのもと、生物(線虫)の優れた嗅覚を利用した簡便で高精度な早期がん検出法を発明した。本手法は他に、非侵襲、安価、迅速、網羅的など多くの特長があり、早期の実用化が期待される。

15:40〜16:30

7)質量分析器データと多次元データ解析を用いた匂い印象の予測・再現
東京工業大学 精密工学研究所 中本高道

質量分析器データに対して深層機械学習を適用し、官能検査で得られた香りの印象を予測する手法を提案し、従来手法に比べて良好な予測結果が得られた。また、質量分析器データから非負値行列因子分解法(NMF法)を用い、少ない数の要素臭を用いマススペクトルを再現した結果と再現臭の官能検査による評価について紹介する。

※当日、都合によりプログラムの一部が変更される可能性もありますが予めご了承下さい。

 

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